ダンデライオン~春、キミに恋をする~

チラリと見上げてみる。
目の前には緩んだエンジ色のネクタイ。

喉仏。

そして……綺麗な顔。


……近い。




「椎菜、大丈夫?」

「えぇ? だだ、大丈夫っス!」



って、わあああ!
急に下向かないでよぉぉ


慌ててうつむく。

だけど、前髪が響の胸元に触れるのがわかる。



うわーん
人混みより、こっちの方が心臓にやばい……。


響は両手でつり革に捕まりながら、あたしの顔を覗き込んだ。


「っはは。なに?その“大丈夫っス”って」

「えぇ? や。 あの……」


…………ツッコまないで下さい。

どんどん上昇する体温をどうすることも出来ず。

相手の体温がわかっちゃうほど近くにいるのなんて、初めてだし。
それなのに、そんなの全然気にしてない響にちょっぴり悔しくなる。

あたしだけが、好きなんだって実感してしまう。


……ずるいな。



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