ダンデライオン~春、キミに恋をする~
そんな想いを込めてチラリと見上げてみれば、首を傾げた響の瞳の中にいた、マヌケな自分と目が合ってしまった。
ううう。
真っ赤な頬を見られたくなくて、あたしはうつむいた。
いくらバスの中が満員だって言っても。
こんなに密着しなくちゃいけないなんて……、響に申し訳ない。
肩幅くらいに開いた響の両足の間に、あたしの小さな足が納まってる。
つり革に捕まったその腕が、あたしの顔の両側を塞ぐ。
あらためて思うと今の状況、キツイかも!
ドクン
ドクン
ドクン
ああ……なんかほんとやばい。
め、目眩が……。
――グラッ
ぎゃ!や、やばい……ほんとに限界!
って、違う違う。 バスがカーブを曲がり、その遠心力で車体が傾いたんだ。
た、耐えろあたし!
耐えて――!
「きゃ……」
そんな願いも虚しく、何にも捕まっていなかったあたしの体は当たり前のように重力に逆らえず持っていかれる。