ダンデライオン~春、キミに恋をする~

慌てて巾着を掴んで、はきなれない下駄に足を突っ込んだ。

ドアノブに手をかけて、小さく深呼吸をする。


――…よし。




「……お、お待たせ」

オズオズと見上げてみる。


ドキ!


目の前にいる彼は、制服の時とはやっぱり雰囲気も違ってて。



「こんばんは」



そう言って首を傾げてニコリと微笑んだ響の無造作にセットされた髪が、ふわりと揺れた。

淡い色のチェック柄のTシャツを重着して、緩すぎないジーンズを着こなしている響は、まるで雑誌からそのまま飛び出してきた装い。

少しごつめの真っ黒な腕時計が、響の腕をなんとも魅力的に見せていた。



ドキン

ドキン


うぅ……。
かっこいい……。



その姿を直視できなくて、俯いた。
たぶんあたし、真っ赤だ……。







『カランコロン』

人通りのまばらな路地に小気味良く響く、下駄の音。

ゆっくりな歩幅のあたしに合わせて歩く、もう1つの足音。


夕陽があたし達を照らして、長い影が出来る。
響の影に、あたしの影が並んでいた。


それだけなのに、なんだかくすぐったくて。
気恥ずかしくて。


頭1つ分よりも高い響をこっそり見上げた。
と、同時に響も視線を落とす。



「やっぱ女の子だなぁ」

「へっ?」


ぎゃっ!
こ、こっち見た!


どうして振り返るタイミングとか、一緒なのかな。
見上げた瞬間、響が振り返るっての、よくあるし……。


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