ダンデライオン~春、キミに恋をする~
ひとりで焦ってるあたしなんかお構いなしで、響はニコニコ楽しそうに笑う。
「浴衣、いいね」
覗き込むように、そう言った響はあたしと視線を合わせて目を細めた。
ドキンッ
わわわッ!
そ、その顔は反則です!
「そ、そうかな……。あ、ありがとう」
もちろん目なんか合わせてられなくて。
パッと顔を背けたあたし。
そんなあたしを見て、不思議そうに響が首を傾げたのがわかった。
うぅー……。
今日、こんなであたし大丈夫?
暫く歩くと、あたし達の向かう先に古びた鳥居が見えてきた。
大通りから一本入ったこの道が、松江神社の入り口。
両側に商店街などが軒を連ねている。
通りには、すでにたくさんの人の波。
車がなんとかすれ違えれる程の通り沿いを埋め尽くす、笹の葉。
この笹の葉の出所は、商店街の一軒一軒が寄付してるんだって。
そのそれぞれが、色とりどりに着飾られていて。
キラキラとまるで七色に光って見えた。
まるで星の川。
そう、例えるなら「天の川」みたいなんだ。
「うわ。すっごい人だね」
毎年来てるけど、今年はいつにも増して多い気がする。
思わず立ち止まって躊躇してるあたしを見下ろすと、響がいたずらな笑みを浮かべた。
「迷子にならないでね?」
「なっ、ならないよ。子供じゃないんだから……」
ムキになりながらそう言ってプイッと唇を尖らせたあたしの反応に、満足気な笑みを零すと「んじゃ、行こ」ってさっさと先に歩き出してしまった。
……なんか、かわれてる気がする……。
「ま、待ってよー」