ダンデライオン~春、キミに恋をする~
まるで頭上から降り注ぐような笹の葉。
あたしはそのひとつひとつを見上げながら歩く。
押し寄せるような人並みにあたしがつまづかないのは、響が前を歩いてちゃんと道を作ってくれてるから。
時々振り返りながら、笹の葉を指差してあたしに微笑みかける。
トクン
トクン
おかしいな……。
響がキラキラ光ってて、虹色に見える。
それは煌々と明かりを灯すライトのせいなのか。
それとも、恋のマジックなのか……。
とにかく響が『特別』に見える。
七色に光るそのやわらかな髪に触ってみたい。
響って……
どうしてそんなにキレイなのかな。
かっこいい……のは、もちろんなんだけど。
なんてゆーか『キレイ』なんだ。
妬けちゃうな。
きっと、女のあたしなんかよりよっぽど『キレイ』って単語がしっくりくるはずだもん。
ほら、ふわふわの髪もそうでしょ?
にきびなんてない、ツルツル肌。
長いまつ毛……。
茶色の中の真っ黒な瞳。
うらやましい……。
笑顔もいいけど、その首を傾げた時の瞬き!
もう、きゅん、だよ。
きゅーん。
「――…椎菜、椎菜?」
「……わっ! な、なに?」
キョトンと目をパチクリさせるあたし。
そして。
そこには少しだけ眉間にシワを寄せて怪訝そうにあたしを心配する響の顔。
「大丈夫? さっきから呼んでるのにボンヤリして。 顔も赤いし……熱でもあんの?」
スッと伸びてくるその手にハッと我に返る。
ひぇええ!
「……な、ないない!」
響がこっち見てるの全然気づかなかったよぉ。
「あ、えと、ほ……ほら、あれ! あれかわいーっ!あれを見てたんだよっ」
「え、……あれ?」
こんなことで、頭の中は大パニック。
ごまかすために、適当に指差した。
あたしの指し示す先に視線をそらす響。
響がそれを見て、眉をひそめた。
ん?