ダンデライオン~春、キミに恋をする~
でも、響のそんな顔に気づくわけもなくて。
「……ちょっと待ってて」
なにか思いついたように含み笑いした響。
「え? ちょ……」
あたしを置いて行ってしまった響がいなくなった事にちょっとだけホッとした。
はあー、びっくりした……。
あたし、顔赤い?
そっと両手で頬を抑えた。
た、確かに熱い。
でも、だからって……。
『見とれてて、ぼんやりしてました』なんて言えるわけないよお。
あたしは「ふー」と小さく深呼吸をして少しでも熱が引くように、手でパタパタとささやかな風を顔に送った。
「椎菜」
暫くして帰ってきた響。
「ハイ。 あげる」
「……え?」
まるで子供みたいに無邪気な笑みを零す響。
うそっ!
初プレゼント!
やばいッ。
嬉しいすぎる……かも。
驚きのあまり、思わずウルウル涙目になる。
ようやく引いた熱が戻ってきそうで、あたしは響の手元に視線を落とした。
だけど。
その「プレゼント」に再び首を傾げる。
「…………響? これ、なに?」
「なにって、さっき『欲しい』って叫んだじゃん」
「………そう、だっけ?」
ポケットに手を突っ込んで。
口の端をキュッと持ち上げて。
「ほら」とあたしに差し出した右手の中に、すっぽり収まってしまってる“それ”を苦笑いで受け取る。
「あ、ありがと」
「ん」
にっこり微笑んだ響。
だけど……
だけど……
なんでえええ!
響がくれたものは。
さっきあたしが咄嗟に指差したもの。
ジッと見つめてみる。
……細い目がこっちを見つめ返す。
それは、いかにも渋い感じの木彫りの人形。
……たぶん、彦星……だと思う。
あは……あははは。