ダンデライオン~春、キミに恋をする~

響からの初めての贈り物を大事に抱えながら。

たくさんの人並みに乗って、やっと神社の境内にたどり着いた。
神社の中は、所狭しと露店が軒を連ねている。


『わたがし』や『おめん』それに『金魚すくい』まである。


その屋台ののぼりを見ているだけで、心が自然と弾んでしまう。


まるで夏祭りの縁日。



あたし達の目の前に、小さな子供をこの人ごみから守るために、肩車をしているお父さんの姿があった。

見上げてしまうほど高いところにいる浴衣姿の男の子と目が合った。
年は……3、4歳くらいだろうか?

その子はあたしを見つめたまま、お祭りだと言うのに不思議そうな顔であたしを見下ろしていた。

……え、なに?


お互いに首を傾げた瞬間、男の子はその顔を歪めて泣き顔になる。



「……ふぇ……」

「……え」



え、え?
なな、なんで?
あたしなんかしたのかな?

何かを指差した男の子は、お父さんの頭に必死にしがみついた。



「こあいーーッ」

「へ?」


指差された先に視線を落とす。

……うわ。これか。

それは、彦星の木彫りの人形。


子供からしたら、恐いのか……。
思わず苦笑いになる。

そして再び顔を上げると、もうそこには親子はいなくて。

響が、今の男の子を見てたか気になって隣に視線を移した。

だって、子供が泣いちゃうような恐いものをあたしが可愛いと思ってるなんて。

彼の反応が気になったんだ。


だけど……。
見上げた先は、知らない男の子。


……響?




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