ダンデライオン~春、キミに恋をする~
見上げると、ぶあつい雲のじゅうたんから小さな雨粒が零れ落ちていた。
雨は、次第にその雨脚を強める。
シトシトと小雨程度だった雨も、あたしの足元に水たまりを作った。
「…………」
淡い紫の浴衣が、濡れていく。
前髪から雫が滴り落ちる。
この雨のせいで、境内の人はまばらになっていく。
だけど、あたしはその場から動けなかった。
風車は鳴くのをやめて、静かに雨音に耳を傾けているようだった。
――……帰ったんだよ。
もう、数人しかいない境内をぼんやりと眺めて。
あたしはとそう思った。
わかってるよ。
楽しんでたのはあたしだけで。
きっと、七夕祭りの話をあたしが出したから……。
だかたきっと『行こう』って誘ってくれたんだ。
はぐれちゃっても、別になんともなくて。
響のことだから、バカなあたしを探してはくれたんだと思う。
だけど、見つからなくて。
だから、帰ったんだよね。
「……」
――……もし。
もし、このお祭りに一緒に来ていたのが――……
あの人なら……。
響は必死になって、この降りしきる雨の中を
探し回ったのかな?
って、あたし……。
ほんと、バカ…………。
唇をキュッと噛み締めて、冷たい雨を降らす空を見上げた。
そうしていないと、想いと一緒に涙まで溢れてしまいそうだった。
今日がお天気で。
夜空に「天の川」が見えていたなら
きっとこんなこと、気が付かずにすんだのかもしれない。