ダンデライオン~春、キミに恋をする~

うう。あたし、意識し過ぎ。

……別に、ほらっ!雨だし?
そうそう。雨やどりだし!

家族の人がいるだろうし!
2人っきりってわけじゃないもんね。

うんうん。


自分で自分に言い聞かせて、下駄を脱ぎながら、あたしを待つ響を見上げた。



「ご、ご両親は? あの、挨拶だけでも、し……しておいた方がいいよね」




しどろもどろになりながら言葉にする。

……挨拶ってあたし、図々しいかな?

付き合ってるって言っても、本当の彼女じゃないんだからそんな事しなくてもいいんだろうけど……。


いちお。一応ね?



「……俺、ひとり暮らしなんだけど」

「そかそか。 そうなんだー……っええぇえ!?」


きょとんとしている響より、もっときょとんとしてるはずのあたし。

力をなくした手から、バスタオルがスルリと床へ落ちた。



「ひ、ひとり…………なの?」

「うん。 俺、言ってなかった?」

「聞いてない!」


「ごめんごめん。ま、いいじゃん別に」なんて呑気な声で言いながら、さっさと部屋に行ってしまう響。


「……」


その背中を眺めながら、『まさか』なんてあたしの頭の中の妄想はあらぬ方向へ……。





……きゃあああ!

ダメダメっ、妄想ダメー!


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