ダンデライオン~春、キミに恋をする~

顔を上げると、そこには顔を背けた響。
その肩が揺れている。


「……」


かああああ。

真っ赤の頬がもっと熱くなって、きっと湯気が出てるはず。


もぉ、なんでそんな堪えてんの?
やっぱりおかしかった?

引いた、とか?


やだやだ、やだよー!



「……ひ、響! 笑うなら、声出して笑ってくれないかなっ。よ、余計恥ずかしいじゃんっ」



その顔を見ようと、グイッと響のTシャツを引っ張ってみる。



「ご、ごめ……あはははっ」



いとも簡単にこっちを向いた響は、ソファの背もたれに体を預けてひとしきり笑うと、目じりに溜まった涙を拭った。



「……あー笑った」



なんてなんとも楽しそうにそう言って、持っていたグラスを口に運んで、呑気に残りの紅茶を飲み干した。



「…………笑いすぎだし」



ジトーっと睨んでみる。

響はそんなあたしの視線に気づいて、そしてフッと目を細めた。
そしてグラスを机に置くと、視線だけをこちらに向けた。



「あんまり椎菜がかわいいから」

「へっ!? ……わっ!」


な、なんでっ?

どこがっ?



ビックリしすぎてグラスを落っことしそうになる。
それをなんとか堪えて、チラリと響を見上げた。


身を屈めて座っていた響としっかりと視線が絡まって、思わず目が泳いじゃう。



「春の風……なんて初めて言われた」

「……」



そっちか。

『かわいい』って言う事が子供っぽいってことでしょ?


また淡い期待しちゃったじゃん。


響にバレないように小さく溜息をつくと不意に髪に何かが触れた。



……え?


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