ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「で、そいつの名前は? どいつよ」
沙耶は声を潜めながら、あたしに詰め寄った。
「……な、成田、響くん……」
前髪を手でさっと整えながら「えへへ」って笑った。
「きゃああ!……って、誰?」
「さあ」
「知らない名前だね」
一瞬の間があって、3人が顔を見合わせて首を傾げる中、あたしは1人照れ笑い。
だって。
名前を口にするだけで、なんだかドキドキするんだもん。
それと同時に、タンポポまみれになった髪を撫でるあの笑顔が浮かんでくる。
成田くんは何組だったんだろう。
どこかで会えたら、しゃべってくれるかな。
――ガラガラ
ちょうどその時、教室のドアが勢いよく開き、先生が顔を出した。