ダンデライオン~春、キミに恋をする~

 
その写真を見つめる横顔はどこか危うくて。

儚げで。


手を伸ばせば届く距離にいる響が、なぜか遠く感じてしまった。



初めて会った時のことを思い出す。

緑と黄色のじゅうたんに寝転がってた響。
起き上がった響の髪にたくさんの黄色の花弁がついていた。



あれから……4ヶ月。



まさか、響と付き合ってるなんて。


あの時より、ずっと。
もっと今の方が響の事、好き。





でも、『嘘の彼氏彼女』。



どんどん加速していくあたしの『キモチ』。
頭では、ちゃんとあたし達の関係を割り切ってるつもりなのに。

体は正直で。



泉先生の事が、いつか響の中から消えたとしたら。
その時、あたしは隣にいれるんだろうか?


小さく溜息をついたのと同時。
妙に納得したような響の声に我に返った。



「ずーっと引っかかってたんだよね。 椎菜見るたびなんかに似てるって」

「……はぁ」



それが、草花の代表……たんぽぽですか?



いつの間にか写真から視線を外して、あたしを覗き込んでた響。
その真剣な瞳。




「あ、でも黄色い方じゃないな。 白い綿毛の方」

「……わたげっ?」



ますます訳わかんない。
なになに?
なんでわたげ?

あたし、そんなにふわふわ落ち着きないかな……。


……う。

ひ、否定できない……。


響に借りたぶかぶかの大きなTシャツから洗い立ての洗剤の香りがする。


手の中におさまってるグラスの中の紅茶はとっくにぬるくなってしまった。


ググって眉間にシワが寄ったあたし。

それでも響は、ジッと食い入るようにあたしを見つめてる。


その瞳の呪縛から逃れたくて。
あたしは慌ててコクンと紅茶を口に含んだ。

グラスを口につけたままチラリと見上げると、頬杖をついた響がなにやら怪しげに口元を緩めた。



「……」



……え、え?




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