ダンデライオン~春、キミに恋をする~
あの『箱庭』に?
他の人なんて全然いなかった……。
首をひねったあたしを見て、大野健吾がにやりと笑う。
背筋にヒヤリと冷たい汗が流れた。
「だから、俺は信じられないんだよね。
アンタとアイツがほんとに付き合ってるって」
「……」
ドクン
ドクン
もし。
本当にあそこにこの人がいたとしたら……。
あたし達の事、バレちゃってるのかも。
「……べ、別に信じてくれなくても、いい。
関係ないじゃん……」
そう言った、言葉も頼りなくて。
震える手でギュッとジャージを握りしめた。
失礼なヤツ。
好きって言えば……それで許されるの?
「…………」
とにかく今はこの人の目の前から逃げたい。
これ以上ここにいたら……。
なんか悔しくて泣いちゃいそうだ。
くるりと向きを変え、今度こそ出て行こうとした。
でも……。