ダンデライオン~春、キミに恋をする~
・夏だ!海だ!恋せよ男の子
抜けるような、青い青い空。
どこまでも続いていきそうなほどの入道雲。
青々と茂る、深い緑の山が並んでいて。
背丈ほどある大輪の向日葵が、緩い風に乗って揺れている。
聞こえるのは、耳元で鳴いてるみたいな蝉の声。
そして、かすかに聞こえる海の音。
潮風が髪を揺らし、キラキラの太陽がノースリーブから覗く腕を容赦なく焦がす。
夏休みに入って、最初の週末。
あたしは見上げたまま、立ちす尽くしていた。
「……なんで……」
なんでこんなことに……。
肩にかけた大きな鞄が、ずり落ちそうになりながら、あたしは「はあ」と溜息をこぼす。
眉間にシワを寄せて見上げた先は。
古い感じの日本家屋。
平屋のその建物は、奥にどんどん続いているようだ。
赤い瓦の屋根が印象的。
引き戸の入り口の軒下の上には、錆びついた看板に『民宿かもめ』と書かれている。
夜……コワ……。
思わずゴクリと生唾を呑み込んだのと同時。
見上げていた視界に、フワフワの茶色の髪が現れた。
「ふーん。味があるね」
それはそれは何ともぬるい声。