ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「来ないかと思った」
そう言いながらあたし達の前まで来ると、これまた太陽のような笑みを零して。
それから、チラッと響を見上げる。
視線を感じたのか、響も大野健吾に視線を落とした。
ジッと見られている事に、首をかしげた響。
「……ちゃんと来たんだ。 センパイも」
ふふんと笑った大野健吾。
「ま、暇だったからね」
そう言って、にっこりと笑みを返した。
「……」
こわー、こわー!
だって、今の明らかに嫌味だったでしょ?
そもそも。
なんで響とあたし、それの大野健吾が一緒にいるかというと……。
それは、あの保健室での事。
あたしたちの関係を信じられないと言ったこの男は、「目の前で見せて証明しろ」なんて言いだして。
結果……。
海の家でバイトをするらしい大野健吾と一緒に、3日間あたしと響も付き合わされる破目になったんだけど。
さっさと民宿の玄関を開けて中に行ってしまった大野健吾の背中を追う。
「はあ」
ほんとあの人、無茶苦茶。
それにしても……。
いちばんビックリしたのが、こっちの人だ。
あたしと同じように、民宿を眺めている響。
でも、大野健吾の事なんて興味ないみたいに、玄関先に置いてある“かもめ”の絵に興味を示してる。
「……」
まさか……
響が行くって言うなんて思わなくて。
だって別にあたしたちほんとに付き合ってるわけでもないんだし。
あたしが告られてて、諦められないなんて言われてても、響には関係ない事なんだろうなー……なんて思ってみたり。
だから。
『いいよ、行っても』
って言った時は、信じられなくて何度も聞き返したっけ。