ダンデライオン~春、キミに恋をする~

パタパタと手のひらを仰いで、ささやかな風を作る。

真っ赤な顔を見られたくなくて、あたしは響より先に玄関に入った。
中にはいると意外とおっきくて。
風通りもよくて、なんだかホッとした。


光の届かない薄暗い廊下は、奥へと伸びている。入って、すぐ左手に階段がある。
その上をそっと覗き込んだ。

く、暗い……。
やっぱり夜怖いかも……。


うわ……とたじろいでいると、階段の向こう側から大野健吾が顔をのぞかせた。


「まだそんなとこにいたッ。 荷物置いたらまたここに集合して。すぐにやることあんだから」

呆れたような大野健吾の声に、ムッとしながら、あたしはジトーっと彼をにらんだ。



「え? 荷物って部屋はどこ?」

「あー、そっか。こっち、ついてきて」



あたしの小さな抵抗なんて全然気づいてないみたいに、大野健吾は顎であたしと響を呼んだ。


……。
仮にもセンパイだぞ。








「……え! こ、こ、……ここぉ!?」



連れてこられた場所。
思わず声が上ずってしまう。

入り口に立ち尽くしたまま、あたしの肩から重たい荷物がドスンと床に落ちた。




「俺、先に下にいるから支度出来たらすぐに来て」


「ええッ!!?ちょ、ちょっと……」



待って!


そういう前に、大野健吾はさっさと出て行ってしまった。



あたしと……
響を置いて!!!!


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