ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「ふーん。 ここから海が見えるんだ。意外といいね、この部屋」
「……」
広さは畳8畳分くらい。
真ん中に、古びた机と、向き合うように座椅子が置いてあって。
海の見える窓の前に、これまた古い椅子とテーブルが。
響は、固まってるあたしなんかお構いなしで、窓を開けて外へ身を乗り出している。
カラカラと音を立て、窓が開けられると同時、夏のムッとした熱気を帯びた風が滑り込んできた。
その中に潮の香りもする。
響は窓枠に両手をついて、すぐそこに見える青い空と大海原の境界線を眺めていて、風が響の髪を揺らすたび、あたしの心臓も揺らされて……。
「……」
「やっぱりこの時期は、どこも満室なんだな」
「へッ!!?」
ぼんやりとその背中を見つめていると、急に響が話をふってきたから。
思わずビクリと震えてしまった。
「あ……そ、そうだね」
「ハハハ」なんて笑いながら、落っことしたままだった荷物を拾い上げる。
引きつった顔が見られたくなくて。
この部屋に響と2人っきりなのが、無性に恥ずかしくて。
やたらと言葉を連ねていた。
「やっぱり夏と言えば海だもんねー。あたし、山も好きだけどでもやっぱり海が1番だね! 焼きそばでしょ?焼いかでしょ? それにかき氷! あとはぁ……」
あれ?
なぜか視線を感じて振り返る。
すると……。