ダンデライオン~春、キミに恋をする~
なんだか始まる前から憂鬱。
『民宿かもめ』から歩いて10分。
意外と近くにバイト先はあった。
海の家。
……と、言えば木でできてて。
古くて。
そんなイメージだったのに。
「わぁ、オシャレだね」
外観は、木で出来てるのもちろん。
なんだか南国のリゾート地にでも行ったかの様なイメージ。
すごくおしゃれで驚いた。
「おい! 椎菜!ボサッとすんな」
「は、はい!」
い、忙しい!
厨房にいる大野健吾にこき使われ。
もう、年が上とか先輩後輩とかそんなの関係ないみたい。
てゆか、そんなことを考えてる余裕もないくらい。
お客さんから、注文をとってそれを厨房に伝える。厨房からの料理を、お客さんに運ぶ。
それだけの事なのに、息をつく間もなく時間は過ぎる。
あたしが、大野健吾に怒られながらやってるのに、響と言えば……。
「な、なんで……」
忙しさは微塵も感じさせないほど無表情で。
テキパキそつなくこなす。
……なんだか響にこうゆう接客業とか想像できなかったのに、慣れた様子でやってるあたり、やっぱりただ者じゃない。