ダンデライオン~春、キミに恋をする~


「疲れたあ……」



はあと大きく息を吐き出して。
椅子に身を投げ出す。


カラフルなパラソルが、青い海と、青い空によく映える。

少し離れたとこにさっきまで忙しく働いていた海の家が見える。
夕方の4時を回るところ。
それでも、人の足が途絶えるとはない。




「忙しいからあっという間だったけどなぁ」



そう言いながらあたしの隣に座れる響。
爽やかな笑顔。
ゲッソリしちゃってるあたしとは正反対だ。

……ずるいなぁ


彼をジロリと睨んで。
あたしは、もう一度ため息をつく。



「明日はもっと忙しいんでしょ?ヤダよぉ……。
ってか、大野健吾が怖いよぉ」



想像しただけで、背筋が寒くなる。


だって、アイツ。
今日、超怖かった。

海の家なんて初めてだからしょうがないでしょ?


大野健吾は毎年やってるみたいで。
と、言うか、あの海の家自体がアイツの親戚がやってるんだ。

だから慣れてて当たり前。



そして。
あたしは慣れてなくて当たり前。




「椎菜、頑張ってたよ。それに、あんなに忙しくても椎菜を見てる証拠だよ」

「……」


何が言いたいんだろう……。
響の言いたいことがよくわかんない。
……なに?

響は、あたしと大野健吾を取り持ちたいの?
そうとしか思えない。

だって、アイツの肩を持つんだもん。





「……困る」

「ん?」


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