ダンデライオン~春、キミに恋をする~
ーーーー……
ーー……



窓からの月明かりで青白く照らされた部屋。

耳に届くのは。
まるで心臓のようにリズムを刻む、波の音。


そして。
ギラギラに冴え渡る、頭の中。


夏布団を鼻までかぶって、瞼をギュッと閉じる。




「……」


ね、……寝れるわけないっつーの!



カッと目を開けると、飛び込んできたのは満月。

空には雲ひとつなくて満天の星が、あたしを見下ろしていた。





――コチコチ



「はあ……」



あれから部屋に戻ったあたしは、しっかりと2つ並んで敷いてあった布団に1人パニックになって。

誰もいなくなっていた部屋で、響を『待ってるのも変かな』とか考えたりして。


とにかく意識しまくりだったあたしのもとへ、湯上りの響が戻ってきたのはいいんだけど……。


『待っててくれたの?』


なんて、ニッコリ微笑んで。
濡れた髪をタオルで拭く響はあたしの方へと距離を詰める。

瞬間、“あの夜”の事がふとよぎる。

ワシワシと無造作に髪を乾かしてる響。
伏し目がちの彼と、固まってるあたしの視線が一瞬だけ絡まった。


耐え切れなくて、キュッと目を閉じたあたしに、またものんびりとした声が届く。


『うわ。すげぇ、星の数』


大きく開かれた窓。
その窓枠に両手をついて、身を乗り出す響。


『見た?』って無邪気に笑いながら、響は空を差してあたしを振り返った。

あたしが見てたのは……。







「…………」


いろいろ考えて、バカみたいだったな……。

小さく、小さくため息をついて。
そっと寝返りをうった。

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