ダンデライオン~春、キミに恋をする~
薄い夏布団を、鼻までかぶる。
もうダメだ。
なんにも思い浮かばない……。
なんだか泣きそうになって、あたしは慌てて顔をそむけた。
「……大野……」
「へ?」
響の言った事が聞き取れなくて顔を上げる。
見ると。
上体を起こして、頬杖をついた響と目が合った。
「俺は、来たくてここにいるんだよ。別に誰のタメにってわけじゃない」
「……そっか。 ハハっ。そうだよねーうんうん」
って……。
あたし、ほんとバカ。
そうだよね、響の言う通りだよ。
大野健吾にも言ってたじゃん。
暇だった……って。
そもそも。
あたし達は、付き合ってなんかないんだ。
……。
それから、ほんの少しだけの沈黙。
さっきとは違う、心臓の音。
『チクン』って何かが刺さったみたいだ。
痛いよ……。
「……な、椎菜?」
「……え? ああ、やだな。あたしってばボーっとしてた。何?」
わわ!
あたしってば、なにしてんだ!
凹んでどうすんの。
固くなってた頬を無理矢理押し上げて、あたしは響に笑顔を見せた。
大丈夫。
うん、平気。
笑えてる、あたし。