ダンデライオン~春、キミに恋をする~
それから。
あたしはずーっと話してて。
うちの家族の事とか、沙耶達の事とか。
ショウちゃんの事とか。
バカみたいに笑って、バカみたいにずっと話した。
取り留めもないあたしの話を、響はただ笑って聞いてくれてて。
その笑顔がすっごく優しいのに。
笑ってくれるだけでドキドキするのに。
『別に椎菜のためじゃない』
勝手に脳内変換された言葉。
それが呪いの言葉みたいに、あたしの頭の中でずっと繰り返されてる。
笑顔の裏に、聞こえてくる。
忘れるなって警告と共に。
そして、あたしはいつの間にか寝てしまった。
その日、夢を見たんだ……。
まるで眠り姫のように目を閉じてるあたしに。
そっとキスを落とす、王子様みたいな響。
優しく、ためらいがちに口付ける。
それが触れたのは、一瞬だった。
ーーー夢、だ。
これは、あたしの願望がみせた淡い夢。
それでも、嬉しかった。
彼に愛されたら、きっとこんな甘い視線をくれるんだろうな。
夢でもいい……。
お願い……
覚めないで……。