ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「椎菜」
?
不意に名前を呼ばれて顔を上げる。
「今日はもう上がっていいってさ」
テーブルにコトリと置かれた缶ジュース。
そこから視線をそらすとあたしは首を傾げた。
「え?」
「お疲れ」
隣に腰を落としたのは、大野健吾。
カシっとプルトップを開けて、ゴクゴクと美味しそうにジュースを飲む大野健吾をポカンと眺めてしまう。
「……プハァ! やっぱ働いた後っつーのは最高だな」
「な?」って満面の笑みを向ける彼から思わず視線をそらす。
……なんでコイツがここに。
「……」
目の前に置かれたジュースに視線を落とす。
缶はすでに汗びっしょり。流れる滴を手で拭うと、意を決して顔を上げた。
「あのさ……」
「椎菜! 今から抜けねぇ?」
「え?」
目を丸くしたあたしの手をガシっとつかむと、大野健吾は立ち上がった。