ダンデライオン~春、キミに恋をする~

誰かが、あたしと大野健吾の間を裂くように腕をスッと伸ばした。

あたしを守るように立つ彼の顔は、ここからじゃ見えないけど。


届いた……。
あたしの想いが……、届いたの?




「……あの、なんすか?」




ぼんやりしていたあたしの耳に飛び込んだのは、なんとも低い声。

ハッとして顔を上げる。
大野健吾の顔は見えなくて、かわりに響の背中が、まるであたしを守るように目の前にある。



「……」



トクン


目に映るのは。

色とりどりの花火と。
夜風に揺れる柔らかな響の髪。

なんだか無性に、その背中を抱きしめたい衝動に駆られた。




「……センパイ、俺たち花火見に行ってもいいですよね? 椎菜、行こう」

「え?」



突然、響で見えなかった大野健吾が、ヒョイと顔を覗かせた。

クイッと引っ張られて、転びそうになる。



「……ちょ、わッ」



反転しそうになったあたしの視界。
それを支えるように掴まれた肩。



「…………」



響は、さらにあたしを自分の方へ引き寄せた。



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