ダンデライオン~春、キミに恋をする~
――…ザザァァーン
――――……ザザァーン
寄せては返す、波の音。
それはビードロの夜空と溶け合って、どこからが海で。どこからが空なのかもうわからない。
だけど、あたしはさっきからひたすらその境目を探していた。
ジィィ。
「……」
ジィィィ――……。
「…………」
ダメだ!
耐えらんないっ!
「あ、あの……!」
振りかぶりながら顔を上げた。
あたしの声に「んー?」って感じで視線を落とした響。
覗き込むようにした響に息を飲む。
幻想的な月光に照らされた彼が、いつもとは別人みたいで、胸がドクンってなった。
花火大会があったビーチから少し歩いたところにあたし達はいた。
ここまで一気に来ると、今まで強く結ばれていた手を呆気なく離した響は、砂の上に腰を落とした。
あたしは、そんな響の態度がよくわからなくて。
遠慮がちに隣に並んだ。
……誰もいないビーチ。
右手の奥の方には、まだ色褪せない花火が、次々に打ちあがってるのが見えた。
すごい。
……特等席。