ダンデライオン~春、キミに恋をする~
だけど、そんな花火を堪能してるのはきっと響だけで。
あたしの心臓は、さっきからドクドク早鐘をうってる。このままじゃ、どうかなっちゃいそうだよ。
ドクン ドクン
「あ、あ、あのね……あの。えーっと……」
目が合っただけで、もうパニック状態。
「なに?」
そんなあたしを見て、響は「っはは、困ってる?」なんて、肩を揺らして笑うと、首をかしげた。
こ、困ってるに決まってるでしょ。
……もう。
やっぱり、からかわれたのかな……。
海からの潮風で、響の柔らかな髪が持ち上がる。
「その……ごめんね? こんなことに巻き込んじゃって」
そうだよ。面倒だったよね?
大野健吾は、絶対本気なんかじゃないもん。
苦笑いを浮かべたあたしに、響は後ろに投げ出していた両手と体を戻すとそっとひょいっと顔を覗き込んだ。
俯いた視界に、響の華奢で長い指が見えた。
「うん、ほんと。俺、超ムカついた」
……はい。ごもっとも。