ダンデライオン~春、キミに恋をする~
いたたまれなくて、チラリと視線をおくる。
だけど。
あたしの視線の先にいた響は……。
ーーーなにが、起きてるのかわからなかった。
気が付いた時には目の前に影が落ちてて。
唇に、柔らかな感触。
その熱は、かすめるだけですぐに離れた。
「……」
「……」
時が、止まった。
瞬きもできない。
花火の音も、打ち寄せる波の音も。
何もかも、聞こえない。
そして。
そっと距離をとる響。
その伏し目がちの瞳の中に、目を見開いたなんともマヌケなあたしが見える。
固まったまま、息が触れそうな距離にいる響から目がそらせなくて。
な、何が……起こったの?
揺れる前髪の隙間から、その黒目がちの瞳が
あたしを捕えて離してくれないから。
呼吸するのも忘れてた。