ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「気付いたんだ。……こんなの自分勝手だってわかってる。
だけど、他のヤツにとられるって思ったらめちゃくちゃ焦ってた」
「……」
そう言った響は、少しだけ海を眺めて。
そしてもう一度真っ直ぐにあたしを見据えて言った。
「椎菜とちゃんと、付き合いたい」
……。
…………。
風があたしと響の間をすり抜ける。
波の音が心地良い。
だけど。
あたしの周りだけはさっきから時間が止まったままで。
口を開けたまま、ポカンとするあたしはきっとすっごくブサイク。
だけど響は、そんなあたしを見てちょっとだけ表情を緩めると
「俺と。付き合ってください」
って言って、目を細めた。
うそ……。
「椎菜? なんで泣くの?」
「……な、泣いてない」
慌てて顔をそむけると、フルフルと首を振った。
ジワリと歪む視界の向こう側で、響がほんとに愛おしそうにあたしを見つめてるから
信じられなくて……。
本当に信じられなくて。
夢なんじゃいかって思った。
「キス、してもいい?」
「……えっ?!」
固まったままのあたし。
その私の頬に触れた指先が、ジリジリと耳たぶをくすぐる。
そして、髪を掬い上げて、そのまま引き寄せられた。
吐息が触れるくらい近くで、響があたしを見つめてる。
だんだんと近づく距離。
見たいのに。
記憶に焼き付けたいのに。
ぼやけて見えないよ……。
なにこれ……
あたしやっぱり夢見てるのかな?
こんなに幸せなんて……。
絶対に夢だよね……。