ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「なんで逃げんの?」
「え。な、なんでって……」
どんどん上昇する体温は、限界を知らないみたい。
伺うようにジッと顔を覗き込まれていて、あたしはたまらずうつむいた。
“ちゃんと”付き合うようになったのはいいんだけど。
男の人と付き合った経験のないあたしには、刺激が多すぎ。
まいったなぁ……。
あの日から響はこんな感じなの。
「ほら、こっち」
「へ?」
見上げた瞬間。
グイッと顔をよせて、そのままキスされた。
甘い蜂蜜みたいなキス。
「なッ……な……」
ビックリして口をパクパクさせるあたしを見て、響は楽しそうに笑う。
「隙アリ。……顔真っ赤」
あんまり響が本当にうれしそうにするから、どうしていいのかわかんない。
絶対からかわれてるよね……。
てゆか。
切り替え早すぎだよ……。
あの日以来毎日、いっぱいキスをくれる響に。
なんだかついていけなくて、あたしはひとつひとつに反応しちゃう。
「…………」
あーもう。
顔、あつい。
響はベンチの背に体を投げ出して、空を見上げた。
赤くりんごみたいに火照った頬に気付かれないように、そっと両手で触れた。
チラっと見上げると、ぼんやりしてる響がいて。
その横顔がキレイで、思わず息をのんだ。
ズルいな……。
風がフワリと前髪を揺らした時。
かすかにピアノの音が聞こえた気がした。