ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「……優しくされると、どうしたらいいかわかんなくなる。 響がね? あたしに触れるたびに、浮かぶんだ」
「泉ちゃん?」
「……」
長い黒髪。
優しい笑顔。
みんなに好かれてる、泉先生。
そして、響の好きだった人で。
響のお兄さんのカノジョ。
音楽室で、ふたりが抱き合ってる姿が忘れられないんだ。
ふとした瞬間に、いつも考えてるの。
ふたりの事。
……あたし、怖いんだ。
あの時感じた胸の痛みが、まだ体の奥に残ってて。
古傷みたいに、時々疼く。
自分の嫌な感情を思い出して、唇をキュッと噛み締めた、その時。
沙耶がそっとあたしの手を握りしめた。
ハッとして顔を上げる。
「シィが出来ることはさ」
そう言って、真っ直ぐにあたしを見つめる沙耶の大きな瞳。
「信じる事だよ」
「……」
「信じる者が強いんだから」
「……うん」
そうだよね。
信じてみよう。
海に行った日、あたしに照れて告白してくれたあの響が本物だったって。