ダンデライオン~春、キミに恋をする~


来週に迫った学祭の準備で学校は、にわかに慌ただしくなっていた。

あたし達のクラスももちろん出し物やるんだけど……。



「椎菜、それなに?」

「へ?」



真剣に手元を見つめていたあたしに声をかけてきたのは、沙耶だ。
マジマジと見つめる、沙耶の眉間にはシワが。


……。


「なにって、見ての通り、浴衣だよ」

「え!?」


大きな目をさらに見開いて驚いている沙耶。


「ねね、そこは縫わない方がいいよ?」

「えっ」


あたしは沙耶を見てから、さらに自分の手に持っている物を見た。

思わず口をつぐんだあたし。



しょーがないじゃない!
お裁縫とか料理とか、苦手なんだもん。



あたし達のクラスは、『お江戸カフェ』をやることになったんだ。

名前の通り、みんなで和装して和菓子を出すの。
最初は、アニマルカフェにしようなんて案もあったんだけど…。

なんかグタグタになりそうで。
結局『和』で落ち着いたってわけ。



「ふぅ」と小さくため息をはくと、教室を見渡した。

みんな、学祭の準備であたしみたいに縫い物やってる人もいれば、段ボールに色を塗って看板を作ってる人もいる。


教室中、学校中が笑顔に溢れてて。


そんな雰囲気だけでもワクワクしちゃう。




……あれ?


クラスを眺めていたあたしは、響がいないことに気付いた。

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