ダンデライオン~春、キミに恋をする~
と、その時。
クラスの女子が声を上げた。
「ちょっとぉ、成田くんどこ? 衣装合わせたいんだけどー」
「成田ならさっきジュース持って教室出てったよ。 あくびしてたから、どーせさぼりでしょ」
沙耶があたしの浴衣を両手に持って眺めながら言った。
「もぉ、寝るならここでも寝れるでしょー。 ちょっと、シィ! 成田くん呼んできてくれない? サイズくらい測っときたいの」
「へッ?」
急に話を振られ、思わずビクリとなってしまった。
「シィなら、成田くんがどこにいるのかわかるんでしょ?」
え、え?
なんて詰め寄られ。
「…さ、探してみる」
まるで追いやられるように、あたしは教室を出た。
……。
もう、響どこいったのぉ?
「えっと、響の行きそうなとこ……」
呟いたあたしは、箱庭に向かおうとしてその足をピタリと止めた。
3階の窓から空を見上げると、羊雲がのんびりと空を浮かんでる。
青くて、ほんの少しだけ低い秋空。
そうだ。
あたしはくるりと向きを変えると、階段を駆け上がった。