ダンデライオン~春、キミに恋をする~

起こさないように地面に手をついて、響に近づいた。


「……」



まだあたしに気付いてないのを確認して、隣に腰を落とした。

すぐに連れて戻れって言われてるけど……
少しだけならいいよね?

見るだけだもん。

……ムフフ


なんてひとりで含み笑いなんかしちゃって、あたしはチラリと視線を落とした。

ほんとに寝ちゃってるし。


静かに寝息を立ててる響。
片腕を枕にして、もう片方の手はお腹の上に乗ってる。

そっと覗き込んでみたりして。


傾いてる顔には、まつ毛にかかるくらい長い前髪が風で揺れてる。

日差しを浴びて、色の透けたフワフワの栗色の髪。


少しだけはだけたシャツ。
緩んだえんじのネクタイ。

低い位置の茶色いベルト。
グレーのズボン。


ドキン……


お腹の上の華奢な手。

よく見ると、やっぱり骨っぽくて、ごつごつしてる。



ドキン ドキン



「……」



って、あたし変態か!

勝手に火照る頬をなんとか冷ましたくて、手で仰ぎながら、壁に背中を預けた。


ふぅ……やばいやばい。

もうちょっとしてたら、あたし響の手を触っちゃってたかも。


そう思いながら、あたしは違和感を感じて視線を落とした。



……ん?




「なんだ、襲わないの?」

「…………」


ひええええ!


< 209 / 364 >

この作品をシェア

pagetop