ダンデライオン~春、キミに恋をする~
起こさないように地面に手をついて、響に近づいた。
「……」
まだあたしに気付いてないのを確認して、隣に腰を落とした。
すぐに連れて戻れって言われてるけど……
少しだけならいいよね?
見るだけだもん。
……ムフフ
なんてひとりで含み笑いなんかしちゃって、あたしはチラリと視線を落とした。
ほんとに寝ちゃってるし。
静かに寝息を立ててる響。
片腕を枕にして、もう片方の手はお腹の上に乗ってる。
そっと覗き込んでみたりして。
傾いてる顔には、まつ毛にかかるくらい長い前髪が風で揺れてる。
日差しを浴びて、色の透けたフワフワの栗色の髪。
少しだけはだけたシャツ。
緩んだえんじのネクタイ。
低い位置の茶色いベルト。
グレーのズボン。
ドキン……
お腹の上の華奢な手。
よく見ると、やっぱり骨っぽくて、ごつごつしてる。
ドキン ドキン
「……」
って、あたし変態か!
勝手に火照る頬をなんとか冷ましたくて、手で仰ぎながら、壁に背中を預けた。
ふぅ……やばいやばい。
もうちょっとしてたら、あたし響の手を触っちゃってたかも。
そう思いながら、あたしは違和感を感じて視線を落とした。
……ん?
「なんだ、襲わないの?」
「…………」
ひええええ!