ダンデライオン~春、キミに恋をする~
成田くん、教室にいなかったな。
もう帰っちゃったんだ。
せっかく同じクラスになれて、席も近くになれたから。
思い切って、あたしが校内を案内……とか、出来るかなって思ってたのに。
浮かれすぎだよね。
ちょっと落ち着こ。
ブツブツと自分に言い聞かせていたら、目の前から人が歩いてきてる事にまったく気づかずに、そのまま思い切りぶつかってしまった。
―――ドン!
「きゃっ……」
―――バサバサ
同時に、何かが廊下に散らばる音。
お互いに別の事に気を取られていて、勢いよくバランスを崩す。
あたしはヨロヨロと廊下に尻もちをついた。
「……アタタ……」
鈍い痛みがするおしりをさすりながら、目を開けた。