ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「お、おそ、おそッ」
固まったあたしの視線の先。
そこには、眩しそうに薄く目を開けた響の姿。
「あはは。 冗談だよ」
そう言った響はあたしがいることに、驚いた様子もなくて。
上体を起こして、あたしに並んだ響は相変わらず呑気に「ふわああ」ってあくびをなんかしちゃってるし。
そんな彼から目が離せない。
い、いつから……
いつから気付いてたの?
あたしがいるって……
ドクン
ドクン
「あ、あの……響……」
「んー?」
何か言わなくちゃって、焦っちゃってもうしどろもどろ。
そんなあたしに気付いてるのか、気付いてないのか。
響は、髪をクシャリとすきながらパックジュースのストローを口にくわえる。
「い、いつから…………ッ……」
『気付いてたの?』
って、そう聞こうとして、また固まってしまう。
だって、だって……。
ドクン
ドクン
首筋にかかるのは、甘い吐息。
あたしの視界には、青い空と茶色の髪。
それが風に揺れるたびに、あたしの頬をくすぐる。
「響……あの、な、なに?」
まるであたしに覆いかぶさるように、その顔を近づける響になんとか声をかける。
だけど、それも震えていて。
自分のその声を聴いただけでもっともっと体温は上昇した気がする。