ダンデライオン~春、キミに恋をする~

あたしの声を聞いた響は、手を少しずらしてそのまま視線を合わせてきた。


ドキン!


色素の薄い、茶色の瞳の中に吸い込まれちゃいそうな感覚になる。


「椎菜っていつもいい香りする。なんか俺、誘われてる気分」 

「えっ」


そう言ってにやり。

悪戯に口角をキュッと上げた響は、なんとも楽しそうに微笑んだ。

さ、さ、さそ……!!?

頬がカッとアツくなる。
心拍数もどんどん加速する。

近い……
近いってば!


「えーと、あ、あの……最近気づいたんだけど、響ってよく匂いかぐよね」

「え、そう?」

「そーだよ。 よく、こうやって首のあたりに……」


首を傾げてる響と目がバチッと合って……。
また固まってしまう。


「首?」

「……えと……」


って、わあああ!

頭の中はもうパニック状態。


穏やかな昼下がり。

肌を撫でる風は、少しだけひんやりと冷たくなってきたのに。


あたしの体……アツい。


秋風に揺れる、まつ毛にかかる長い前髪。

その間からまっすぐに見つめられて
あたしのすべてを見透かされてしまったみたいだ。


耐えきれなくて、目をキュッとつぶったその時。



「……ぷはッ」


……え?


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