ダンデライオン~春、キミに恋をする~
チラリと視線を向ける。
教室の真ん中。
にぎわっている教室の中でそつなく仕事をこなす彼。
栗色の髪をちょっとだけアレンジしてピンで留めてるから、いつもなら髪に隠れてる耳が見えてて、なんだか色っぽい。
深緑の浴衣。
えんじのたすきを袖にまわして、柔らかな笑顔を振りまいて……。
「でも……成田笑ってないね」
「……」
――……そう。
スマートに接客してるわりに、なぜかさっきからちっとも笑わない響。
にこりともしないのに、響が接客した女の子たちは頬をほんのり赤らめるから不思議。
長い前髪が歩くたびに揺れてる。
伏し目がちの瞳、それを隠す長いまつ毛。
開け放った窓から吹き込む心地よい風が、響の髪をかきあげ、あたしの頬をくすぐった。
甘い香りがする……
なんだろ……
「……」
と、そこまで考えてこの前の屋上での出来事を思い出してしまった。
……いい香りなのは、響じゃん。
カアアア
勝手に火照る頬。
それを隠すように、あたしはさっと前髪を直した。
「……――、……や、……間宮!!」