ダンデライオン~春、キミに恋をする~


わ、やっちゃった!


見えた先には、大量の紙。
その1つに手を伸ばす。


これって……。


「……楽譜?」



首をかしげたあたしの手元に影が落ちた。


「大丈夫?」


小鳥が鳴くようなキレイな声。
まるで誘われるように、顔を上げた。

見上げると、真っ黒な髪が揺れている。
どこまでも艶のある髪。
それによく似合う、真っ白な顔。

淡いグリーンのカーディガンを羽織ったその女の人は、心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。

薄く化粧された、大きな瞳。
色づいた唇。


……誰?



「ごめんね、わたし余所見してて。 おしり打ったでしょ?」

「え? あ、いえっ平気です! あたしが悪いんです」


吸い込まれそうになりながら、彼女を見入っていたからその言葉にハッとした。


慌てて、散らかっている紙を拾い集める。




< 22 / 364 >

この作品をシェア

pagetop