ダンデライオン~春、キミに恋をする~
わ、やっちゃった!
見えた先には、大量の紙。
その1つに手を伸ばす。
これって……。
「……楽譜?」
首をかしげたあたしの手元に影が落ちた。
「大丈夫?」
小鳥が鳴くようなキレイな声。
まるで誘われるように、顔を上げた。
見上げると、真っ黒な髪が揺れている。
どこまでも艶のある髪。
それによく似合う、真っ白な顔。
淡いグリーンのカーディガンを羽織ったその女の人は、心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。
薄く化粧された、大きな瞳。
色づいた唇。
……誰?
「ごめんね、わたし余所見してて。 おしり打ったでしょ?」
「え? あ、いえっ平気です! あたしが悪いんです」
吸い込まれそうになりながら、彼女を見入っていたからその言葉にハッとした。
慌てて、散らかっている紙を拾い集める。