ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「……響?」
「貸して」
いつの間にかそこにいた響が、軽々と大きなごみ袋をあたしから奪った。
「捨てに行くんでしょ?」
そう言って、さっさと歩いて行ってしまう響の背中を茫然と眺める。
「あ、うん!」
視線だけをあたしに移して響は「行こ」って目くばせをした。
なんか……嬉しいかも。
歩幅の大きな響の後を小走りで追いかけて、隣に並んだ。
外に出ると、肌寒い空気があたし達を包んだ。
すっかりオレンジに染まった空。
見上げると、細長いいわし雲がたくさん並んで泳いでる。
秋だなぁ……なんて思いながら視線をめぐらせると、響の髪が視界に入った。
空のオレンジに溶けちゃいそうな
柔らかそうなフワフワの髪。
響が歩くリズムに合わせて、それも一緒に揺れてる。
目が……離せない。
見てると、目が離せないんだよなあ……。
いいなあ。
渡り廊下に出て、箱庭とは反対の方へ向かう。
すぐに焼却炉が見えてきて、響はポイっとその中に袋を入れた。
「……わざわざ、ありがとう」
背中越しに覗きこむように視線を合わせて言うと、「いーよ」って笑う。
……最近、思う。
すっごく自然だなぁって。
ささいな事が、幸せだって。
目が合えば笑顔になる。
こうして当たり前のように、隣にいれる。
幸せで。
幸せすぎて、やっぱり時々怖くもなるんだ……。これ以上なにを求めてるっていうんだろう。
あたし、欲張りなのかな?