ダンデライオン~春、キミに恋をする~
火のついてない焼却炉をしばらく眺めていると、ふと甘い香りが鼻をかすめた。
「あ、この香り」
クンクンってその匂いをたどる。
そんなあたしに気が付いた響が、匂いを辿るように宙を仰いでから「ああ」とつぶやいた。
「金木犀か」
「キンモクセイ?」
「ん」
どこに咲いてるんだろう。その姿は見えないのに、香りだけはすっごく強い。
響って、草花に詳しい。
好きなのかな……。
そう思って、同じように空を仰いでいた響を眺めた。
ほんと、不思議な人。
響はあたしの事をタンポポみたいって言ったけど。
あたしからしたら、たんぽぽは響だと思う。
少しの風が吹いただけで、フワリと持ち上がるその髪。
それは、間違いなく綿毛でしょ?
パーマ……かけてるのかな?
それとも癖っ毛なの?
触れてみたら、わかるんだろうか。
――ジイイイイ。
触りたいなぁ……。
「……初恋」
「へッ!?」
こ、こここ、恋!!?