ダンデライオン~春、キミに恋をする~
春には色とりどりのチューリップやパンジーを咲かせていた花壇。
もう、何も咲いていないと思った。
……でも。
「……咲いてる」
その花壇には、花が咲き乱れていた。
淡い紫色の小さな花。
それからコスモス。
他にもいろんな種類の草花が秋風に乗って、揺れてる。
この箱庭の罰ゲームの水やり当番は終わったから、こんなに花が咲いてる知らなかった。
思わず駆け寄ってその場にしゃがみ込んだ。
「可愛い。……ね!響、知ってた?こんなに咲いてる」
ゆっくりと後をついてきた響を見上げた。
響は答えるかわりにふわりと笑みを零すと、花壇の煉瓦に腰を落とした。
…………。
「不思議だな」
小さな箱庭。
青々と生い茂っていた木々は、その葉を赤や黄色に色を染めてる。
あたし達がよくここに来ていた、あの時から確実に季節は流れてるのに……。
それなのに、この花壇だけはいろんな色に溢れてて。