ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「え?」
慌てて顔を上げる。
その先に、俯いた沙耶がいて思わず瞬きを忘れてしまった。
沙耶はすごく明るい。
まるで太陽みたいな子。
あたしがウジウジ悩んでると、いつも「何言ってんの」って笑い飛ばしてくれる、そんな子なんだ。
決して下を向かない。
明るくて、美人で、サバサバしてて。
あたしの憧れの存在。
その沙耶が、足元を見つめたまま小さくため息をついた。
「成田が無理してるって思う事、ない?」
「え?」
無理してる?
無理って……。
質問の意味が分からなくて、瞬きを繰り返すあたし。
そんなあたしを見て、「実はさー」って声のトーンを少し上げて沙耶が話し出した。
「航平とケンカしたんだ。 毎年恒例だけどぉ」
「うん」
去年も、おととしも、クリスマスの事ですっごいケンカしたって聞いたっけ。
その事を思い出しながら、あたしはコクリと頷いた。
「アイツのバイト先ってレストランだからこの時期……ってかクリスマスって超忙しいんだって。 だからなかなかシフト替れないみたいなんだけど」
「うん」
「でもさ? やっぱりクリスマスじゃん? 一緒にいたいじゃん?男にとっては別に大した行事でもないみたいだけど、女子にとっては一大イベントじゃん?」
「……うん」
「ましてや航平なんて社会人だからさー。なおさらどうでもいいみたいなんだ」
「……」
航平君って、沙耶が大好きで。
もうぞっこんで。
いつもあの古いクーパーで迎えに来ちゃうくらい、沙耶を大事にしてて。
そんな人でも、大事な彼女のいう事でも仕事を優先させちゃうんだ……。
あたしは頷くのも忘れて、沙耶の言葉を聞いていた。