ダンデライオン~春、キミに恋をする~
それはすべて楽譜だった。
先生……なのかな?
でも、こんな綺麗な先生……いたっけ?
「……あのぉ」
楽譜を手にしたまま、目の前の女の人を見上げる。
そんなあたしに気づいたのか、彼女は「あ」と声を上げた。
「もしかして……間宮、椎菜さん?」
「え?」
な、なんであたしの名前知ってんのっ?
きょとんとしてるあたしにやわらかい笑みを零すと、彼女はさらに楽しそうにこう続けた。
「初めまして。 私、臨時講師で今年1年音楽を担当をします。森嶋泉(もりしまいずみ)です。 あなたのことは、村上先生から伺ってる。 ふふ。遅刻、したんでしょ」
「……うっ」
なにバラしちゃってんのよ、ショウちゃーん!
そうか。
だから、知らなかったんだ……。
先生の紹介って、始業式の時にしちゃうもんね。