ダンデライオン~春、キミに恋をする~

12月21日。
修了式当日。


狭い体育館の中に全校生徒が押し込められて、校長先生の長い話を聞いていた。


足元冷えるなー……。


ポケットに入れてあったカイロを握りしめて、ふと顔を上げる。

すると、すぐに見覚えのあるふわふわの栗色を見つけた。



トクン



ちょっとだけ首をもたげて、両手を組んでる響はなんとも興味なさそうに、壇上の校長先生を見つめていた。


ふふ。眠そう……。

思わず1人含み笑いをして、慌てて俯いた。



響を見るだけで、胸が小さく反応する。
心地いいなって感じる反面、ああ、あたしってこんなに好きなんだって実感する。

そのたびに、真っ赤になるあたしを響はいつも面白そうに眺めていた。




トクン



その顔が……また好きなんです。
茶色の柔らかな前髪が揺れて、アーモンドの瞳をスッと細めて。
口元を緩める響。

そして決まってその後に、


「ん?どした?」


って覗き込まれる。
わかってて、そう言う響。
からかわれてるなーって思うけど、でも怒れないの。



トクン



ああ、やばい。
まただ。


また、心臓が……。



カサッ!



手の中が急に冷えて、ハッとした。
響に見惚れてて、カイロを落としてしまった。


慌ててしゃがんでそれを拾うと、さっきまで後姿だった響が振り返った。


ドクン!



うう、見られてた。
カイロ落としたのが恥ずかしいんじゃなくて。
なんて言うか、それまでの過程と言うか……。


真っ赤になったあたしを見て、響はちょっとだけ口を動かした。



へ?


『ネ』?







「ねるな……」



ね、寝てないしー!!!

意地悪に笑った響は肩を揺らして前を向き直った。


うう……。イジワルー。


時々意地悪なのも……好きなんだけど。


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