ダンデライオン~春、キミに恋をする~
クリスマスか……。
訊いちゃえばいいのに。
簡単だよ。
「どうする?響」って……。
簡単な事のはずなのに、なぜかあたしの口は重たくて。
ずっとずっと大変な気がしてしまった。
「? なんかあった?」
「……う、ううん、なんでもない」
――わ。
ぎこちなかった。
響、変に思ったかな?
「帰ろッ。やっと冬休みだねー」
響が不思議そうに瞬きをしたのを、あたしは見逃さなかった。
だけど、あえて明るくそう言うと、笑顔を向けたんだ。
だって……聞けない。
怖いもん。
もし、泉先生の名前をだして、響の顔色が変わったら?
先に廊下を歩き出したあたしの後にあっという間に追いついた響。
「うわ、外寒そ」なんて言いながらぐるぐるマフラーを首に巻いてる彼は、当たり前のようにあたしの隣に並ぶ。
肘がちょっとだけ触れ合った。
……ドキン。
この距離が、嬉しくて幸せで……もどかしい。
前よりもっと響が好きになってるぶん、あたし……泉先生の事、絶対聞けないよ。