ダンデライオン~春、キミに恋をする~
火照った頬を隠すように、うつむくと残りの楽譜を拾って先生に渡した。
「……ショウちゃん……じゃなくて、村上先生はなんて……」
「ん? お腹が痛くてトイレから出られない生徒がいるって」
「ええっ?!ち、違いますからっ!」
なに言ってくれちゃってんのよぉ!
ショウちゃん!
それとも沙耶!?
どっちでもいいけど、16の乙女にはキツすぎるっ!
「ふふ。 大丈夫大丈夫。 みんなに言ってたわけじゃないから。 わたし、間宮さんのクラスも担当するから、今年1年よろしくね」
「……はぁ」
「それじゃ、わたしは音楽準備室にいるから。 なにかあったらなんでも言ってね?」
「……ありがとうございます」
廊下にペタンと座ったまま、花をふりまくような可憐な笑顔で去っていく彼女の背中をぼんやりと眺めた。
……これで男子もうるさくなりそう。
「って……早く行かなきゃ!」
あたしは重い腰を上げると、職員室へ続く階段を駆け上がった。