ダンデライオン~春、キミに恋をする~


そろそろ帰らないとな……

時計を確認すると、すでに20時を回っていた。


ケーキもぜんぶ食べちゃって、ふたりでトランプしたりして遊んだ。
最初は「えー、トランプ?」って面倒くさそうな響だったけど、意外と負けず嫌いってコトもわかって。

すっごく楽しくて。


帰りたくないなー……とか思ったり。

ずっと、ずーっと響といたいな。


でも。



「そろそろ行く? 送ってくよ」



ズキ


響がさっきからあたしより時計気にしてるの、気付いてるよ?


今日はクリスマスだもん。
もっと、一緒にいたい……。

でも、わがまま言ったらだめだよね。

キシキシ痛む心臓に気付かないふりして、あたしはカバンを手繰り寄せた。


「バス停まで近いし、大丈夫だよ。ひとりで行ける」

「俺も行く。 ほら、カバンかして」



ダウンを羽織って、いつものマフラーをグルグル巻くと、響は手を差し出した。


……。
ほんとに帰るんだ……。


自分がどんどん欲張りになってる。
もっと、もっと響と近づきたくて。

怖くなるよ……。




「……椎菜?」



気持ちが、焦る……。



「……」



リビングの入り口であたしを待ってる響を見ることもできない。

俯いたまま、自分の足元から視線が上げられない。




わかってるのに、体がいう事聞いてくれなくて。
喉の奥がキュってして、瞼がジンと熱くなって……。

あたし、どうしちゃったの?



ビリビリ感じる、響の視線。
いつまでたっても動き出さないあたしを見てる。


ダメだ……。

これ以上ここにいたら、あたし泣いちゃいそう……。




「ほんと平気! 今日はありがとうっ。それじゃ、また」



響を横をすり抜けて、玄関に向かって駆け出した。



その時だった。


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