ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「……じゃあ、響。またねっ」
俯いたままそう言ったあたしは、ふたりの間をすり抜けて、外へ飛び出した。
瞬間肌を刺す、冷たい空気が現実感をなくさせる。
あたしは息をするのを忘れて、バス停まで走った。
大丈夫。
あたしは、響を信じてる。
だから、彼には泉先生とちゃんと話をしてほしい。
前に進むために。
そう……思うのに。
頭では、わかってるのに……。
なんで……
「なんでぇ……?」
いつの間にかあふれ出した涙が、次々と頬を濡らす。
風を切って、冷たい空気にさらされた頬が、涙で濡れる。
拭っても拭っても、永遠に止まりそうにない。
「ふぇ……うっ……」
ついに立ってられなくなって、あたしはその場に崩れるようにしゃがみ込んだ。
見たくない。
もう、あんな光景、見たくなよ……。
怖い。
響が、泉先生の元へ行っちゃいそうで。
本当は……怖いんだよ。
響……寒い。
手も顔も、体も。
心の奥底まで冷え切ってしまった。
助けて……。
助けてよ……。
「椎菜っ」
突然肩に触れた手。
顔を上げたあたしを心配そうに覗き込んだ、七色の髪。