ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「椎菜ちゃんは、デートだったんだ?」
「えっ」
その声に顔を上げると、イツキ先生がニッコリと微笑んでいた。
イヴなのに、先生も大変だな。
あ、先生の顔赤い……お酒飲んでたんだ。
玄関に出てきてはないけど、リビングにお父さんがいる気配がする。
きっと無理矢理付き合わされてたんだろーな……。
「おねーちゃんの彼氏、あたしも見たかったなぁ。すっごいイケメンなんでしょう?なんで連れてきてくれなかったの~」
「あのねぇ……」
この母にこの娘あり。
あたしも人の事言えないけど……
我ながらミーハーなんだよなぁ。
でも、クリスマス特有のふわふわした雰囲気に、すごく救われてる。
「へえ。そんなにイケメンなの?僕もぜひ会ってみたい」
ハハって楽しそうにそう言ったイツキ先生。
カアアって頬が火照る。
もぉ、先生まで……。
「そうなんです!椎菜にはもったいないくらいの、爽やかな男の子でね?」
「ウンウン」って相槌を打って、ニコニコしてる先生。
その辺にしといてください。
そこでお母さんが何かに気付いたようにハッとした。
「でも、そー言えば……」
ん?
そこにいる全員が、考え込むお母さんに注目する。
うーーんと宙を仰いでいたお母さんが、あたしの顔を見て口を開きかけたその時。
ピンポーン
「あら、誰かしら」
お母さんはそそくさと玄関を開ける。
そして、「まあまあ!」といつもよりワンオクターブ高い声でその人を出迎えた。