ダンデライオン~春、キミに恋をする~
状況、まったく把握できないんだけど。
イツキ先生が、響のお兄さん?
前に響の家で見た、あの留守電の主?
そう言えば
初めてイツキ先生に会ったとき、響を思い出した。
声が似てるって……。
それって、やっぱり兄弟だったから……。
イツキ先生は、勢いよく飛び出して、響に詰め寄った。
「お前、俺がどれだけ連絡したと思ってるんだっ、母さんたちにも何も言わないで……って、おい、聞いてるのか?」
あたし達がいるのに、感情をあらわにする先生に、思わず怯んでしまう。
ただ成り行きを見守るしかなくて……。
でも。
そんなあたしに響がふわりと笑いかけた。
ドキンって胸が高鳴る。
「椎菜、コレ」
え?
そう言って差し出されたのは、小さな包み紙だった。
キレイにラッピングされてるから、きっとプレゼント……。
大きくて華奢な手にすっぽりと収まってるそれを、ジッと見つめたまま動けずにいると、響は少し強引にそれをあたしに持たせた。
「それと、ごめんね」
「え?」
ハッとして顔を上げる。
マフラーで鼻まで隠れたその表情はよくわからなかったけど、ハの字に下がった眉に泣きそうになってしまった。